2025年5月初旬、島根県・隠岐諸島のクラフトビール事情を探るため、現地を訪れました。今回は「おきのしましまビール」の販売元である京見屋分店(島後)を訪ねます。
- その① 隠岐の島Brewing飯美(島後):小さな集落で進む醸造所建設
- その② 京見屋分店(島後):おきのしましまビールの販売元を訪ねて ←今回
- その③ 喫茶ゆらぎ(島後):クロモジを使ったふくぎビールで乾杯!
- その④ 島のめぐみ麦酒(島前/海士町):次世代を見据えた海洋熟成ビール計画
ビールが飲める雑貨屋?
その①で島の北側の飯美地区を取材後、港がある南側に再び戻ってきました。レンタカーを返却し、ここからは徒歩で向かいます。

次なる目的地は「京見屋分店」。港(西郷港)から約1km、徒歩13分ほどのところにある雑貨屋さんです。
なぜこのお店を訪れるのか?
それは、雑貨屋でありながらビアスタンドが併設されており、さらに、ここでしか飲めないオリジナルビール「おきのしましまビール」あるからです!

インスタで見つけて以来、ずっと来てみたかったお店。
ついにやって来ました、京見屋分店!

洗練された居心地の良い店内!
店内には、センスの良い食器や暮らしの道具、アウトドア用品などが並んでいます。

隠岐らしいお土産品も充実。どれも丁寧にセレクトされた印象を受けます。

インスタで想像していたよりも店内は広く、入口も2つ。こちら側の入口では、ワンちゃんがお昼寝中でした。

お昼寝していたのはコーギー犬のテンちゃん。なんとこのお店の店長でした。

そしてこちらが“人間の”店長の谷田さんご夫妻。

洗練されつつも、ナチュラルで開放的な店構え。
センスの良い雑貨やお土産の数々。
気さくなオーナー夫妻と、かわいいワンちゃん。
もう、お察しですね?
このお店、めちゃくちゃ居心地よさそうです!
「おきのしましまビール」とは?
しかも、こんなゆったりしたカフェスペースもあるんだから最高すぎます。

この場所でオリジナルビール「おきのしましまビール」が飲めたら、これはもう天国でしょう!早く飲みたい!

しかし…!
大人気過ぎて、前日に売り切れてしまったとのこと…!
なんと……!無念…!!
東京からの移動距離800km以上。
この一杯のために隠岐に来たと言っても過言ではありません。
実に無念ですが、これもまた離島ビール旅の醍醐味。
簡単には出会えない。これぞ離島ビール!!
気持ちを切り替えて、石見麦酒(島根県江津市)のベルジャンホワイトで乾杯!これ、美味しい~!!!

とはいえやはり「おきのしましまビール」への未練は断ちがたく、空き容器を並べて記念撮影。テンてんちょうのイラストもかわいく、気持ちがほっこり緩むような素敵なラベルです。

ずっと気になっていた裏面ラベルも激写!
隠岐の島(島後)のブランド米『島の香り 隠岐藻塩米』と、島で採れた八朔を使用した、華やかな香りとキレのよい喉ごしが特徴のセゾンビールだそうです。(製造は県内の石見麦酒に委託)

隠岐藻塩米とは、島後(隠岐の島町)で栽培されている特別なお米。島の特産の海藻アラメと海水を煮詰めて作る「藻塩」の水溶液を、栽培中の稲に噴霧するという独特の栽培方法で育てています。ミネラル分をたっぷり含み、濃厚なお米の香りと甘みが感じられるそう。(出典)

八朔は、島内の油井地区で採れたものを使用。ここは八朔栽培の地としては全国で最北端とのこと。そんな“北限の八朔”の果皮を香りづけ用に使用しています。(出典1、出典2)

なにより、販売元である京見屋分店の「地域」と「ビール」に対する情熱がすごい。公式ブログでは、製造委託先の石見麦酒への並々ならぬ思い入れが綴られていますし、島内でオキトーバーフェスト(OKI TOU BEER FEST)などのビールイベントを開催していたりもするみたいです。単にオリジナルビールを作ってみたという次元ではない、ものすごい熱量とストーリーを感じます。
そんな「おきのしましまビール」、次こそは必ず飲みたい!もっと色々お話も聞きたい!絶対また飲みに来ます!!

人と人が出逢い、新しいことが生まれる場
この空間、とにかく居心地がいいんです。色んな本や雑誌があるし、ビールをはじめドリンクメニューも豊富だし。

なにより、谷田さんご夫妻が醸し出す雰囲気が素晴らしいです。はじめましての人にも、常連の人にも、ちょうどいい塩梅に接してくれるから、みんなが居心地よく過ごせる空間になっています。

夫の晃さんは島後の出身。
京見屋分店は、1952年創業のお茶屋で、晃さんはその3代目です。
妻の一子さんは島根県出雲市の出身。
大学卒業後は小学校の教員になり島後へ赴任。その後、晃さんと出会い、結婚しました。
晃さんが先代から京見屋分店を引き継いだのは2011年。
このタイミングで一子さんも教員を退職し、夫妻で経営をはじめました。
折しも東日本大震災で社会の価値観が大きく変化しはじめた頃。時代流れやニーズに応じながらお店の形や取り扱い商品を変えてきたといいます。
お店を引き継いだ当時のエピソードや、その後の変化の様子は、隠岐の島町移住定住ガイドブックに掲載のインタビュー記事が分かりやすかったので、以下に抜粋させていただきます。

「当時は、カフェ的な要素は無く、ただ棚に商品を並べて売るだけの店でした。でも、いつも誰かしらがやってきて、店の隅でお茶を飲んで喋っては帰っていく、というのはありました。先代の頃から、お客さんが来たら、お茶を飲んでもらっていく、という習慣があったんです。自分たちも、外で人に会ったら、店に足を運んでもらえるように“今度お茶飲みに来てよ”って声をかけていたんです」
この独特なスタイルが、今の京見屋分店に繋がっていく。
「ある日、お世話になっている工務店の方が、島内産のクロマツで作った大きなテーブルを持ってきたんです、いきなり。笑 始めは置く場所もないのに困ったな、と思っていたんですが、いつの間にかそこに人が集まる雰囲気ができて。その辺りから、店の空気感が変わりだしたんです。人と人がここで出逢って、面白いアイデアをくれる。それによって店の方向性も大きく変わっていきました」
2019年にはキッチンとカフェカウンターを導入し、クラフトビールの提供も開始。ゲストを迎えてのフード販売やビール祭りなど、イベントは毎回大盛況だ。
「次々と新しい人に出会うことで、こういうことができたらいいな、あの人とこんなことができたら楽しいな、と盛り上がっていく。若い人を応援するというよりは、一緒に楽しませてもらっている感覚です」
“自分たちに個性はない、それが集まる場所になっているだけ”
控えめにそう語る二人だが、その交流を目一杯楽しみ大切にする姿に、多くの人たちが引き寄せられているのだろう。
【引用元:隠岐の島町移住定住ガイドブックP.17】
京見屋分店の変化は現在進行形です。2023年春には、店舗横に、ワーキングスペース「風待ちoffice」が出来上がりました。見学の様子を、ご夫妻の温かい空気感も含め、動画でご覧ください。
ネット環境も完備されているそうです。ここでビール飲みながらワーケーションしたい!

「ここはシャワールームとランドリールーム。別に宿をやってる訳じゃないんだけど。」と笑う晃さん。

「常に何か棚を作ったり、物を動かしたり、終わりがないです。」と笑うお二人。
次に訪れたときは、どんな空間になっているのか?
ビール以外にも楽しみが増えました!
居心地が良すぎて・・・
時計を見たら13時。
居心地良すぎて忘れていましたが、帰りの船の時間が迫ってました。
万一、乗り逃したら次の船は夕方。島前に妻子を置いてきた僕にとって、それは家庭の危機を意味します。
お土産を選びたかったけど時間無くなっちゃった…必ずまた来ます!

おきのしましまビールも、今度こそ必ず飲みたい!

いや~ほんとに素敵なお店だったなぁ。

と、ほっこりと余韻に浸りながら、足早に港へ向かう僕。
何かを忘れているような…。
飲んだビール代を支払ってなかった…!(人生初の食い逃げ)
急いで来た道を戻り、支払いを済ませました。
しかし、もはや徒歩では乗船手続きの締切に間に合いません。
ということで晃さんが車で送ってくれました。本当にお優しい…。

車だとあっという間に西郷港に到着!本当にありがとうございましたm(__)m

おかげさまで帰りのジェットフォイルの乗船券が買えました!
少しだけ待機時間が出来たので、欲が出てきました。
もう1か所だけ、港周辺のビールスポットに行ってみたいと思います。
次回に続きます。お楽しみに!


