瀬戸内海に浮かぶ小さな離島・六島にあるマイクロブルワリー「六島浜醸造所」のビール作りに密着取材!

前回完成させたビールの原液に、いよいよ酵母を投入して発酵させます!

 

 

いよいよ酵母投入…!

おもむろに醸造タンクを引っ張り出してきた井関さん。

今朝の熱湯消毒後、タンク丸ごと冷蔵室に入れてキンキンに冷却していたのです。

 

ここでダメ押しのエタノール噴霧!執拗なまでの消毒

いよいよ酵母を投入し、麦汁を発酵させる工程がはじまります。

ここから先は、ちょっとでも雑菌が混入すれば取り返しがつきません。

工房内の緊張感が一段と高まってきました!

 

 

投入の瞬間はカメラNG!

…と、ここで見学は中断!

酵母の投入作業は超繊細な真剣勝負なので、僕は屋外待機となりました。

※ドラム缶の周りに集まる猫たち。昨夜の焚火の熱が残っているのでしょうか。

 

ブルワーにとって雑菌混入はまさに悪夢。

ビールを台無しにしないよう、いつも細心の注意を払っています。

例えば、井関さんは納豆やキムチなどの発酵食品は食べないそう。

納豆菌や乳酸菌は非常に強力なので、ビール作りの大敵なのです。

 

発酵は、雑菌混入を防げばよいという単純なものではありません。

温度管理も非常に重要です。高すぎても低すぎても酵母が働いてくれません。

特に、酵母投入直後の立ち上がり(投入した酵母が順調に増殖を始めてくれるか、はたまた失活してしまうか)の温度はとてもデリケートなのです。

 

これは前回の麦汁作りでのワンシーン。

六島浜醸造所内の壁には、「六島麦のはじまり」の初回仕込みレシピがメモしてあります。

 

「初回仕込みの時は酵母がうまく立ち上がらなかったんです」と振り返る井関さん。

ビールのお披露目イベント目前でのまさかのアクシデント。師匠から電話で助言を受けながら、なんとかリカバリーに成功しましたが、眠れない夜を過ごしたそう。当時の状況やリカバリー手順なども細かく壁に書かれていました。

 

後から聞く分にはドラマチックで面白いですが、自分がその立場だったらと考えると背筋がゾワッとしますね。

 

 

麦汁の冷却とエアレーション
さて、再び工房内への入室許可をいただきました。
右の醸造タンクは、すでに酵母が投入され上蓋が閉じられた状態です。
電動ポンプにより、左の大鍋内の麦汁が、右の発酵タンクに移送されている最中です。
 
途中、麦汁は熱交換器で冷却されると同時に、エアレーションにより酸素が添加されます。
酵母の立ち上がり(発酵の初期段階)には酸素が必要なのです。
 
麦汁が移送され、だんだんと大鍋内の水位が低くなっていきます。
鍋底の様子を観察する井関さん。
 
鍋底には、ホップ由来の固形分や麦汁由来のタンパク質凝固物などが沈殿しています。
これを巻き上げないように注意しながら、慎重に麦汁を移送していきます。
 

 

 

人事を尽くして発酵を待つ!

麦汁を注ぎ終えたタンクを、空調管理された醸造ルームへ移動させ、バルブ等の最終点検をします。

これから酵母の働きにより、タンク内からは大量の炭酸ガスが発生します。
各部品やバルブの締め付けに不備があると、破裂等の大事故につながります。
重厚なステンレス製の部品がはじけ飛んだら…。絶対に油断大敵です。
 
生成された炭酸ガスは、ホースを通じて排出されます。
バケツに張った水の中にホースの先端を沈めることで、外気の流入を防ぎつつ一方通行の排気を実現します。
あとは温度を一定に保ちながら、酵母が順調に立ち上がるのを待つのみ!
 
早朝から仕込みを始めて、いまの時刻は14時30分。昨日の麦芽破砕や洗浄作業も含めると膨大な時間を費やしてきました。
万一、酵母が立ち上がらなければすべてが無駄になってしまいます。
急に怖くなってきました。ワクワクというよりドキドキです。
 
頼む!無事に立ち上がってくれ!次回に続きます!

 

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