新しいビールを求めて塩飽諸島・本島(香川県丸亀市)を訪れた旅行録。前回に引き続き、久福ブルーイング本島のプレオープンにお邪魔しております。
※記事の内容は、訪問日(2022年11月5日)当時のものです。
醸造所見学(中編-①)の後も、直売所のカウンター越しで楽しくお話を伺いました。
下の写真は、当日の夜にホテルに持ち帰って飲んだ時のものです。右が「瀬戸内Sour」(ビアスタイル:ゴーゼ(サワーエール)、Alc.4%)、左が「岡山清水白桃Weizen」(ビアスタイル:ヴァイツェン、Alc.5%)。
「瀬戸内Sour」は、瀬戸内の海塩と香川県坂出市の極早生みかんを使用し、乳酸菌の力を借りて醸す「ゴーゼ(サワーエール)」という珍しい種類のビール。爽やかな香りと酸味が印象的で、ビールというより白ワインに近い味わいです。
「岡山清水白桃Weizen」は、岡山県産の高級な清水白桃を惜しげもなく使用したビール。苦みはほとんど感じず、柔らかな口当たり。決して甘ったるくなく、白桃のスッキリとした部分のみを残したような上品な味わいです。
2種類とも苦みが抑えめなので、ビールが苦手な人にもおすすめです!!
ちなみに今回飲んだのは試作バージョンだそうで、瓶には「PROTO-TYPE」のタグが掛かっていました。
今後は仕込み(バッチ)毎に、001福、002福・・・のようにナンバリングをしていく予定だそうです。
ビールとは酵母の働きで生まれる発酵食品。同じレシピで作っても温度やタイミングの微妙な変化で、全く同じ味のものを作ることは難しいそう。その困難を大手メーカーは工業化技術で克服し、安定した品質のビールを供給できている訳ですが、離島の小規模ブルワリーがそれと同じ路線で頑張っても勝ち目がないし、つまらない。むしろ、季節の移ろいや自然の揺らぎを感じるように、バッチごとの味の変化を楽しんでもらいたい。そんな狙いを込めてのナンバリングだそうです。
遠く離れた離島のビールでも作り手側の変化や進化が身近に感じられるような気がして、とても素敵な仕掛けだと思いました!
久福ブルーイング本島では、お洒落な緑色のボトルを採用しています。一見するとスパークリングワインのようで、高級感がありますよね。
贈答品に選んでもらい、本島とクラフトビールを知ってもらうきっかけになりたい、との想いがあるそうですが、このボトルが採用された理由はそれだけではありません。
さっきも書いたとおり、2種類とも苦味が控え目で一般的な「ビール」のイメージとは異なる飲み物です。クラフトビールに詳しい人(多様なビアスタイルの存在を知っている人)にとっては違和感ないでしょうが、そうでない人に「これが本島のビールです」といって提供したら、一般的な「ビール」の味とギャップが大きくて、純粋な味わいより、違和感が先行してしまう恐れがあります。そういった不幸なミスマッチを回避する意味もあって、ビール瓶っぽくないこの緑色のボトルを採用したそうです。
お話の中から一貫して感じたのは、クラフトビールを知らない人にも届けたい、という想いです。ビールマニア向けの「ビアバー」ではなく、気軽に立ち寄りやすい「直売所」なので、本島を訪れた際はぜひ!(営業日は公式インスタを要確認)
ところで、お二人とも本島の出身ではないそうです。いったいなぜ本島で開業しようと思ったのでしょうか?
ちなみに、この美しい浜辺には、ハマゴウ(浜香)という野草が自生しています。
これを乾燥させると、セージのようなとってもいい香りがするんです!
ハーブティーにしていただきましたが、本当に爽やかな香りです。これが目の前の浜辺で取り放題なんて素敵すぎる!
本島は小さい島なので、農業があまり盛んではありません。島ならではの素材でビールを作るのは難しいかも、と諦めかけていた宏平さんですが、数か月前に島の人からハマゴウを教えてもらい、現在はこれを使ったハーブビールを構想中だそうです。
ハマゴウビール、爽やかで美味しいでしょうね!完成したら絶対飲みたいです!
お二人の話は、FMラジオの落ち着いたトーク番組を聞いているようで、心地よい時間が流れていきます。
聞けば聞くほど、お二人とも、ものすごく思考が深いです。
本島出身でもなく、ビール業界出身でもないお二人。
離島ありき、ではない。
ビールありき、でもない。
でも、小さな離島でビールを作ることの意味を考え抜き、本土のビールでは味わえない感動を提供しようとする姿勢を、お二人から強く強く感じました。
他のどの島とも違う、新しい離島ビールの船出を垣間見ることができ光栄でした。離島びーる倶楽部として、これからも大注目させていただきます!
さて、この後は、すぐにフェリーで本土側(丸亀港)へ戻ったのですが、丸亀港でも久福ブルーイング本島のビールと思いがけず遭遇したので、次回後編でレポート予定です。公開まで気長にお待ちください!